全4巻「ナポリの物語」の第1巻「リラとわたし」では、主人公エレナの低い自己評価の描写がたくさんあります。
みすぼらしい身なり、ガリ勉のような大きい眼鏡、親友リラがすらっとしているのに対し背も低くぽっちゃり。
とりわけ身なりについては、ナポリの貧しい地区で生まれ、新しい教科書を買う余裕もない家庭で育ったため、お洒落などには縁がなく、服でも水着でも「母さんに縫ってもらった」ものを着ています。
親友リラのキャストについては、キャラがあまりに強すぎるため、どんな女優が演じても読者からは「こんなのリラではない」という不満が出てしまうのではないかと思います。
で、主人公エレナのキャスト。
もう少しみすぼらしくて垢抜けない感じがあってもいいんじゃないかと感じました。
例えば、この場面。
抱えている本こそぼろぼろですが、着ている服は洒落ていて、漂う雰囲気もお嬢様学校の生徒といってもおかしくないぐらい。
まぁ、ドラマシリーズである以上、原作に忠実にみすぼらしくし過ぎると画面映えしなくてなってしまうから?なのかもしれません。
エレナの眼鏡
にしても、眼鏡ぐらいはもっとダサくてしてもいいのに、と思いました。
というのも小説の中では主人公エレナの眼鏡は、、、
荒れた肌、顔も口も鼻もやたら大きくて、哀れな目を取り囲むフレームは、ただでさえ太い眉の下に、怒れるデザイナーがやけくそに描いたようだった。わたしは極めつけに醜くなった気分で、眼鏡をかけるのは家の中だけにしよう (中略) と決めた。
「リラとわたし ナポリの物語1」位置No.4588
うちの母さんは (中略) わたしをにらみつけた。お前はそんなみっともない眼鏡をかけて、晴れの舞台からかけ離れた場所にいるというのに、悪い友だちのほうはさっさとお金持ちの旦那を見つけて、
「リラとわたし ナポリの物語1」位置No.5270
わたしだって、勉強漬けの日々を送るガリ勉眼鏡の女学生ならではの、ちょっとした幸せがあってもいいではないか。ニーノと散歩して、手に手をつないで‥‥。
「新しい名字 ナポリの物語2」位置No4013
と、ひどい言われよう。
であるのにドラマの中では、
こんなにも眼鏡が似合っています。フレームの大きさもかえってオシャレ感。
日本語訳の表紙のエレナ
一方、日本語訳の表紙になっているイラストはとてもいいです。
見事にエレナを捉えていて、きっとリアルなエレナってこんな感じなんだろうな、と思わせてくれます。
★
偉そうにドラマキャストの不満のようなことを書いてきましたが、こういうことをああだこうだ言うのが楽しいわけで、ドラマ化してくれたからこそ、です。
HBO共同制作のためか資金がふんだんに投入されており、50年代ナポリの団地地区のセットなんかは素晴らしく、見たときは「おお!と声が出ました。
コメント