イタリア・アパート探し記【10】〜内見③〜

3件目の内見に漕ぎ着きました。

ボローニャの中心地区を囲んでいる外周道路から一本奥に入ったところ。

探し始めのころは、立地は中心地区であることを条件にしていたのですが、1か月経ってそんな選り好みができるような状況でないことを理解。

中心地区まで歩いていけるだけでも好条件です。

内見時間の30分前

内見時間の30分前にはアパートに着き、まわりを歩いてみました。

一本となりの道に出ると、ボローニャのシンボルである丘の上の教会が見えるのが気に入りました。

いわゆる住宅街といった感じの通りで、中心地区のように建物がぎゅっと詰まっていない点も良いです。

約束の時間にアパートのエントランスで待っていると、階上から人が降りてきました。

不動産会社ではなく個人の宅建士

このアパートを管理している個人の宅建士の方です。

不動産会社ではなく、個人の宅建士が管理している場合が結構あります。

アパートの外観は、中心地区のような歴史を感じさせる建物ではありません。中に入ってみても特に特徴のない内装。エレベーターはなし。

正直なところ、今わたしが住んでいるアパートのほうが良く、「本当に引っ越す意味あるのか?」という思いが浮かびそうになるのを抑えます。

もう引っ越しを決めて、今の大家さんに退去通知してしまっているのでそんなことを考えても無意味なので。

キッチン+2部屋

間取りはかなり広々。小さめの食卓を置けるぐらいのキッチン、その他に2部屋。浴室はバスタブ付き。

これだったら1部屋を事務所がわりにしてもいいな、などとつい皮算用までしてしまいます。

短所は、完全に北向きであること、建物の外観はあまりぱっとしないこと、ぐらい。

10分ぐらいの内見が終わってすぐに「ここに決めたい」という意思を伝えました。

本来であれば「少し考えさせてください」と言いいたいところです。

が、「少し考えた」数日後に物件がまだ残っているほど、ボローニャの不動産市場はのんびりした状況にはないことをこの1か月で実感。

こちらが即断したとしても、ほか多数いる候補者の中から自分が入居者として選ばれる保証はまったくありません。

必死にアピール

この物件にも、これまで同様、ほか多数の候補者がいます。

貸す側からすると、個人事業主は会社員に比べて分が悪いので、畳み掛けてアピールを試みます。

このアパートの家賃が今のアパートと数十ユーロしか変わらないため、まずはこんな風に言いました。

「私は10年以上この額の家賃を滞納することなく払い続けてきた。固定給がある会社員ではないが、その事実が何よりのギャランティではないでしょうか。必要であれば、今の大家さんにそれを証明する一筆をもらうこともできます」

話を盛る

そして、さらに。

「(後ほどメールで送る)確定申告書にある収入のほかに、日本でも幾らかの別収入がある。輸入業を営む友人の仕事を手伝っており、その収入は日本円なのでこちらの確定申告書には反映されていない」

これはかなり盛っています。

輸入業を営む友人の仕事を手伝ったことが数回あるだけです。

以上のようなことを、なるべく礼儀正しくアピールしました。感触からして、この宅建士の方には悪くない印象を持ってもらえたような気はします。

しかし、いくらこちらの宅建士にアピールしても、実際に入居者を決めるのは大家さんです。

楽観

宅建士の方に、

「大家さんにはあさって会う予定なので、そこで入居者を決めることになります。あさっての夜にメールで連絡します」

と言われ連絡を待ちます。

まぁ大丈夫なんじゃないか、と楽観していました。あそこの部屋には新しいテーブルを置こうかな、などと引越し後の構想も膨らませていました。

そしてメールが届きました。

「落選」

「残念ながらアパートの入居者は他の人に決まりました。 他の物件情報が入ってきたら必ずお知らせします」

試験や面接の結果が不合格だったときのような感情で、久しぶりに味わいました。

たかがアパートのこと、まだ他にもたくさんある、と分かってはいるものの、この自分を否定されたかのような感覚‥‥

「敗因」を分析して、次に備えなくてはなりません。

ダブルインカム有利?

メールの文面「残念ながらアパートの入居者は他の人に決まりました」にある「他の人」というのが複数形でした。

なので入居者は、家族あるいはカップルである可能性が高いです。

狭い間取りの物件には「入居者は1人のみ」と指定されている場合もありますが、今回のように子ども1人の家族でも住めるぐらいの広さであればむしろ2人以上に住んでもらいたい、ということがあるのかもしれません。

イタリアでは、カップルでも夫婦でもほとんど共働きなので、ダブルインカムという意味で、一人暮らしより経済的な安定度が高まります。

民泊が賃貸物件を圧迫

この数年、イタリアの大きい街での家賃の高騰、そして物件数の少なさが問題になっています。

こちらの学生は、キッチン・トイレ・シャワーは共同で「部屋借り」の場合が多いのですが、その部屋代が400〜600ユーロにまで達しているというのです。

ウクライナ侵攻後の世界的な物価上昇に加え、Airbnbを始めとする民泊が原因だとも言われています。

アパートの所有者が物件の多くを民泊用にしてしまうため、賃貸物件がどんどん少なくなっているというわけです。

「よりどりみどり」な大家さん側

こうして少なくなった賃貸物件に多くの人が殺到するため、凄まじい貸し手市場となりました。

私のようにアパートを借りたい側は、選り好みする余地はなく、ほとんど片っ端から物件に問い合わせなければなりません。

一方、大家さん側にしてみれば、入居者の選択は「よりどりみどり」だと思われます。

例えばの話、ある大家さんが入居者の条件を「女性、そして公務員であること」と絞ったとしても、遅かれ早かれ見つかるでしょう。

それぐらいアンバランスな状況であることが実感としてあります。

そんな中、わざわざ経済的な安定度に欠ける(=家賃滞納リスクが高い)個人事業主を入居者として選ばれることがあるのか?

自分が貸す側だったとしてもおそらく選びません。

活路は知り合いルート

そうなってくると、イタリアでは時には理不尽なほどパワーを発揮する「知り合いの紹介」に活路を見出すしかないわけですが、アパートを貸したいと思っている知り合いなどがそんなに簡単にいるわけでもなく。。

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