「自分が見てきたどの日本映画やアニメにも、親と子の衝突や不仲が描かれている。作品の本筋に関係なくても、どこかにそんな場面が必ず挟まっている」
イタリア人の友達がこんな指摘をしました。どの作品でも、親と子はあまり仲が良くない、というのです。
日本文化に興味を持っているイタリア人なら大抵見ている宮崎作品でいえば「千と千尋」、近年話題になった日本映画でいえば「万引き家族」。
前者では、千尋と両親の関係は映画の冒頭では良好に見えないし、後者ではそもそも実の家族と問題を抱える人たちばかりが集まって暮らしています。
親と子の不仲、衝突なんて普遍的なテーマなのだから、それを扱うのは日本のコンテンツに限らないのでは?という気がしますが、言われてみるとイタリア映画ではそんなに描かれていないようにも思いました。
そして、あることを思い出しました。
こちらで語学学校に通っていたとき、授業のあとに映画上映会がよくあり、集中的にイタリア映画を見ていたころに気がついたことです。
どの映画にも必ず浮気とか不倫のシーンがある‥‥
つまり、イタリア人の友達は日本のコンテンツの中に頻繁に描かれるテーマとして「親と子の衝突」を、私はイタリア映画の中のそれとして「浮気、不倫」を見たということになります。
私はイタリア映画をよく見ていたのはその時期だけで詳しくもないので、的外れな印象かもしれませんが、友達の指摘に関してはけっこう的を得ているのではないかと思います。
tradimento:裏切り、不倫、浮気
その友だちは、親と子の衝突・不仲をこう言っていました。
conflitto tra genitori e figli
conflitto という言葉は、権力の闘争や、地域の紛争という意味だと思っていたのですが、こういう場合も当てはまるようです。
そして、浮気や不倫は、辞書を見るといくつか言葉が載っているのですが、実際にはいつも、
tradimento
を使っています。
動詞は tradire で「裏切る」の意味。友達を裏切る、とか、期待を裏切る、とかにも使っていて、浮気や不倫に特定された裏切りではありません。
あんなにたくさん浮気や不倫を扱った映画が多いのに、日本語のように、それそのものだけを表す単語がないというのを意外に思ったものです。
tradimento という単語に関しては、「L’amica geniale」の中で幼いリラがエレナから人形を奪って地下室に放り投げるシーンがありますが、
mi aveva preso la bambola a tradimento
L’amica geniale, capitolo 2
この場合、私の人形を裏切ってとる → だましとる。
辞書にも、
a tradimento 裏切って〜する、卑劣なやり方で〜する、出し抜けに〜する
とあり、こういう使い方もするのだと知りました。
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